社長ブログ

ご近所付き合い

4月に入って20℃を超える日が数日続いたと思ったら、自宅や会社周辺の桜の盛りはあっという間に過ぎてしまいましたが、毎年この時期になると思い出す光景があります。

会社が現在の山形村に移転して6年になりますが、以前は松本駅から徒歩で15分ほどの町中にあり、幅10m程の道路を挟んで田川小学校という小学校がありました。この学校は私の父(2代目社長)も卒業した伝統のある学校です。敷地内には桜が植えられていて、この時期は道に面していた会社の事務所から桜の様子がよく見え、その付近をピカピカで大きなランドセルを背負った新入生が登下校して行きました。

普段も、登下校の様子を目にしたり、学校の校内放送が聞こえたり、工場の屋上からは校庭が一望できるなど身近な存在でした。原料の搬入や日々の出荷で大型トラックが出入りする際などは、児童を巻き込んだ交通事故が起こらないよう気を遣いましたが、大豆の勉強の一環で工場見学に来てくれたこともしばしばあり、その都度、先生が子供たちの感想文を届けてくれました。「校庭で遊んでいるといいにおいがすることがあり、何かなと思っていたらおみそをつくるにおいでした」といった感想があり、煮た大豆や麹のにおいに対していいイメージを持っていて安心しました。そんなご縁で、地区代表の学校評議員を務めさせていただいたこともあり、学校の関係者とも知り合いになりました。PTA主催のバザーに賞味期限間近の商品を協賛したり、地区の子供会の行事では、冬は「三九郎」で会社に飾っていたダルマや松飾りを燃やしてもらい、夏の「青山様」では事務所の前でお囃子をやってもらって「ご祝儀」を差し上げたりしました。いわゆる町工場として地域に溶け込んで共存していたように思います。

こうした日々のお付き合いの中で、ご近所の方にご迷惑はかけられない、見学に来た児童に持たせたお土産のお味噌で美味しいお味噌汁を飲んだだろうか、小学生が関心を持ってくれる、小学生にいいイメージを持ってほしい、そんな思いが育まれて、商品の品質向上や環境問題への対応の基本にあったと思います。今盛んに言われているSDGsに含まれている内容ですが、理念ではなく、顔の見える関係から自然と生まれてくる気持ちでした。

現在は、工場団地に隣接した場所で、周囲は工場や物流センター、大型ショッピングセンターなどがあり、住宅はなく、地域住民の方々との関わりは秋の「そば祭り」に出展して商品を試食販売する程度ですが、コロナ禍でそれもここ2年程中止になっています。工場としての効率性や環境問題への対応、土地の有効活用といった観点からすれば現在の方が勝っているのでしょうが、身近な食品を扱っている中小工場としては、地域の方々との交流の機会が無くなってしまい、残念な面もあります。

現在の環境においても、やる気と工夫次第で地域社会のとのかかわりは可能であり、心掛けているつもりですが、春のこの時期、桜や新一年生からの連想で、昔の地域とのかかわりを若干のノスタルジアと共に思い出します。

関連記事

TOP