ここ2年続きの山椒の不作で、山椒みそ用の山椒がなかなか手に入らずに困っています。
山椒の産地は和歌山県が6割、続いて高知県が3割で、この2県で日本の山椒生産の9割を占めています。第3位以下は兵庫県3%、岐阜県2%で一気にマイナーな産地になりますが、全国的に不作のようです。
当社の山椒みそは1980年代の発売以来、ずっと岐阜県奥飛騨で採れた山椒を使っています
。奥飛騨産の山椒は香りが強く、この地が江戸時代に天領だったこともあって将軍家に献上された由緒あるものです。
山椒みその開発に当たって、香りを消す効果のある味噌に負けないよう香りの強い山椒を選んだと聞いています。
40年以上のお付き合いとなる山椒屋さんの協力で、料亭で使用されるような高級品を回して頂いており、お陰様で山椒の香りがしっかりとした山椒みそになっています。
その山椒がいよいよ品薄となり、来年にかけて山椒みそだけで無く、山椒を使用した味噌タレの生産調整が必要になってきました。
販売の休止や、製造を請け負っている商品については配合の見直しをご相談しながら、遣り繰りして行かざるを得ません。
これまでに経験した不作による原料調達難と言えば、1990年代半ばの国産米の不足です。
冷夏で国産米の生産が大幅に落ち込み、大豆と並ぶ味噌の主原料である原料米の価格が高騰しただけでなく、入手困難となりました。
この時に味噌業界では初めて輸入米を使用し始めました。当時、海外ではパサパサした長粒種が大半で、それを如何に蒸して米糀を作るか、業界挙げて試行錯誤してなんとか味噌の生産を続けました。
その後、海外でも国内と同じ短粒種の生産が広がり、今では大手メーカーを中心に輸入米の使用が定着しています。
山椒の場合は、嗜好品で産地による違いもあり、何より生産量そのものが少ないため、
代替策は限られてしまいます。農産物は作柄の波が避けられず、「今年は不作で手に入りません」と言った事態が生じます。
メーカーとして売るものがない事態はお客様に申し訳なく、経営にも響きますが、お米の様な主食は別として、少なくとも嗜好品に関しては、「自然環境が食生活に影響を及ぼす、私たちが自然と繋がっている」ということを改めて実感する機会と捉えて頂きたいと思います。